高専専攻科に進学するか悩んでいる人に読んでほしい、高専の専攻科のメリット・デメリット

高専の専攻科。高専によっては成績上位層に人気の進学先だったりします。専攻科についてはいい話しか聞いたことが無いって人もいると思いますが、それもそのはず。高専の教員たちは優秀な学生に専攻科に残ってもらいたいから専攻科のいいところにしか触れません。私的にはいい面ばかりだとは思わないですが、後輩を中心に専攻科が崇拝されているような気がしたのでこのような記事を書きました。どのような進路でも言えますが、よく考えてから自分の進路を選択してほしいので進路選択の手助けになれば幸いです。

メリット(とされているもの)

1.学費が安い

学費が安いです。確か国立大の2分の1です。また、入学金は国立大よりはるかに安いので親孝行かもしれません。だけど私的には、学科内順位が1割以内だけどお金がないという人は長岡や豊橋の特待を取った方が良いと思います。長岡と豊橋は寮の部屋数が多いので申請すれば寮に入りやすいので生活費がそこまでかかりません。なぜ専攻科より長岡や豊橋の特待の方が良いかは後で触れます。

2.本科の時の研究を引き継げる。

本科1年と専攻科2年でじっくり研究すれば何かしら成果が出せそうですよね。だけど大学には研究室配属前の低学年時から勝手に研究室に出入りして研究している凄い人もいます。そういった人たちは大学の整った設備で何年も研究して成果を出しています。一方高専はあまり資金がないため設備が整っているとは言えない場合もあります。同じ時間をかけたとしても設備がいい方で研究した方が良い成果は出やすいので、本当に研究したいなら大学に編入して3年次から大学の研究室に出入りした方が良いと思います。

また、高専の教員は同じテーマで3年間研究が出来ると言いますが、3年間同じ研究するならば本科1年+専攻科2年より、大学の学部1年+大学院修士課程2年の3年間研究に取り組んだ方が良い設備で質の高い研究ができると思うんですよね。これが先ほど言った長岡や豊橋の特待を取った方が良い理由でもあります。

3.推薦で受かりやすい

専攻科は推薦が取れればかなりの確率で受かります。そのため早くから卒研に取り組めるメリットがあります。ただ推薦ですぐ決まってしまうため受験勉強をしなくなるので、何もしないと一般入試組と数学や物理、化学などの理学分野での学力差が大きくなります。「研究できればいいんだよ、理学の知識なんていらんわ」と思う方もいるかもしれませんが、そういった考え方を改めないと研究者や技術者になっても三流どまりです。そもそも工学の根本は理学であり、理学を知らないと工学の上辺だけしか触れることが出来ず、物事の根本を覆すような物を作り出したり新たな発見をすることはできないのです。理学の知識がないのは理系として致命的です。最初の方は一般編入組に対してリードすることが出来るかもしれませんが、何年か後で追い越されるかもしれないので、推薦をとっても自分自身で足りないところを補う努力をしないと厳しいと思います。

あとは一般で受験するという茨の道を進む経験をした方が後々困難にぶつかった時でも諦めず対処できるようになるかもしれません。

4.有名な大学院に入りやすい

専攻科生は長い時間研究に費やしているので大学院から人気があり、有名な大学院への推薦を貰いやすいです。これは羨ましい限りです。ただ、本当に自分が行きたい研究室に入れるかは別で、基本的に枠が空いている研究室にしか行けません。枠が埋まっていたら取ってくれません。本当に行きたい研究室があるならば3年次編入した方が良いです。更に、院から研究室に入るとなると学部時代に出来上がってるコミュニティに入っていくことになるのできつい人にはきついかもしれません。

5.長期インターンで経験値が上がる

技科大にもあったよね…

6.学士が取れる

これは大きな落とし穴。あくまで学士が取れるのであって、大卒にはならない。専攻科を出ても高専卒に変わりはない。そのために専攻科卒を本科卒と同じ条件で採用する企業が存在するのだ・・・。まあ大体の企業や官公庁は大卒相当として扱ってくれますけどね。

7.後輩に慕われる

上位層が専攻科に行く風潮のある高専ならば、専攻科=頭がいいと思われているのでいいかもしれません。ただ、学内だけです。

8.自分が決めた研究テーマに取り組める。

大学だと勝手に指導教員に研究テーマを決められてしまうこともありますが、高専は学生自ら研究テーマを決められる場合があるので、自分が思い付いたことを長くじっくり追求したいなら専攻科はかなりオススメです。私もこれが出来ることに気付き専攻科を検討したこともあります。

デメリット

1.一般教養科目が足りない

一般教養なんぞいらねーよばーかって言っている人はだいたい視野が狭いし、感性が豊かではないのでできればリベラルアーツっていうのはやっておいた方が良いと思います。

2.優秀だった人たちが外部に行ってしまい、刺激が少なくなる

本科時代はそういった人たちと張り合って進化できたかもしれませんが、張り合う相手がいなくなると切磋琢磨する必要がなくなるのであまり進化しなくなる気がするんですよね。

3.環境が変わらない

環境が変わらないことを売りにしている専攻科もありますが、違う環境で学ぶこともあります。特に専攻科に行くと同じ学校に7年通うことになりますが、普通の大学進学する高校生はその間に大学進学することにより大きく環境を変えています。人脈形成の面から考えるとかなり不利にならざるを得ないと言えます。長岡や豊橋高専と雰囲気が変わらないと言う人がいますが、日本全国の高専生が集まるので新たな出会いが必ずあります。そう考えると順位がいいけど経済的不安が有る人は長岡や豊橋の特待を取った方が将来的にはいい選択だと思います。研究だけが全てではないですからね。

4.本当に研究者を目指すならば不利

本当に研究者を目指すならば日本学術振興会の特別研究員(いわゆる学振)を目指します。この学振というのは、わかりやすく言うと博士課程進学時に研究に専念するために研究費と生活費を支給する制度です。学振を申請するにはある程度研究を進めて成果を出す必要があるため、大学院1年生から学振を準備するには少し遅く、学部4年ごろから少しずつ準備する必要があります。専攻科からの進学の場合は大学院1年生から研究開始になるので、学振が取れないとは言いませんが不利なことは確かです。だからできれば学部と大学院は同じところに行く方が良いのです。

俺は博士課程に行かないから学振なんてどうでもいいという人がいますが、じゃそういう人はなぜ長い時間研究に費やすのでしょうか。修士で就職するならば研究職でないかもしれないので人脈を築くなり研究以外の部分にも力を入れるべきだと思います。

5.研究に向いてなければ地獄

これは大学編入にも言えるのですが、進学先は卒研が進まないうちに決めなければいけないので、進学先が決まった後に研究が向いてないと気付くと辛いかもしれません。ただ、大学に行けば学部4年で適当に卒研して(学部レベルならばそこまで高いレベルを要求されない)院に進学せず就職して研究生活からおさらばできます。

しかし専攻科は研究から逃れられないうえ、研究メインの時間割が示すように研究に特化したカリキュラムです。厳しいことを言えば、研究が出来なければ存在意義を失います。専攻科生は部活に参加できないところもあるので就活時のアピールも難しいところです。専攻科から就職する研究の出来ない高専生より、同じく研究が出来なくても様々な刺激を受けてきた大学生の方が価値が高いのは自明です。研究に向いてなかった時のバックアップを取るならば大学に進学した方が良いでしょう。

6.学校の気持ちにもなってみなさい

中学生は大学の進学実績で進学先を決めるのですから、高いレベルの大学に沢山行っていると中学生が進学実績に釣られやすく・・・じゃなかった魅力を感じて進学を希望するようになります。旧帝に行ってない私が言うのもアレですが、せっかくならば旧帝などの高いレベルの大学に進学して中学生を釣って高専のレベルを上げましょう。専攻科に学科上位層を生かせようとする教員がいる高専もあるそうですが、そうすると進学実績が下がって優秀な中学生が入らなくなり、最終的に学生のレベルが下がる気がするのですがそれでいいのでしょうか?

最後に

この記事を書いた人がただ単に専攻科アンチなのかもしれないと思ったかもしれませんが、専攻科のデメリットを指摘する人がいないのでかなり厳しく書きました。専攻科進学希望ならばよく専攻科について考えてほしいと思います。でもこんなこと書いた私も専攻科への出願を考えたくらいなので、完全否定するつもりはありません。ただ、上位層がずっと学科1割などいい順位をキープして推薦で行くような場所ではないとは思っています。そういう人は大学に行けばもっと高いレベルに到達できると思うので専攻科は滑り止めにして上の大学を目指すのが良いと思います。

昔ある先輩に専攻科のデメリットを叩き込まれてから私は専攻科懐疑派になりましたが、私に専攻科のデメリットを叩き込んだ先輩自身が専攻科に行ったので専攻科はいいところなんだと思います。たぶん。

 

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